死神×少女
朝になった。
亜矢はふと、隣で眠るコランに視線を向ける。
まだ、熟睡しているようだ。
亜矢はコランを起こさないように静かに起き上がる。
朝食の準備を終えたが、一向にコランは起きて来る様子はない。
いつもならこの時間、コランはすでにでテーブルについているはず。
亜矢は自分の部屋に行くと、ベッドで未だ眠り続けるコランに声をかける。
「コランくん、ご飯出来たけど……まだ寝る?」
すると、意外にもすでに目を覚ましていたらしいコランは小さく答えた。
「う………ん」
亜矢に背中を向けているので、コランの表情は分からない。
どこかいつものコランらしくない反応に、亜矢はベッドの側に寄るとしゃがみこんだ。
ふと何かに気付いた亜矢は、少し膝を立てて寝ているコランの顔を覗き込む。
寝息にしてはどこか、荒々しい息遣い。苦しそうに眉を歪めている。
「コラン……くんっ!?」
亜矢は小さく叫ぶと、コランの額に手を当てる。
「熱……い…!」
額に当てた手から、異常な程の熱が伝わる。
あきらかに発熱している。
(そんな……まさか、病気!?)
亜矢の心臓が、不安と戸惑いによって激しく鼓動する。
悪魔の平熱なんて知らないし、まして人間と同じように病気にかかるかなんて、そんな事はもちろん知らない。
だが、コランの紅潮した頬。苦しそうな呼吸。
何か、コランの身体に悪い異変が起きた事には変わりはない。
(どうしよう。そうだ…薬、解熱剤……!)
そう思って亜矢は立ち上がろうとしたが、コランがとっさに亜矢の片手に触れた。
触れられたコランの手から伝わる熱に、亜矢は引き止められた。
「どこ行くの?…側にいて、アヤ……」
薄く瞼を開け、赤色の瞳を潤ませながら、コランは弱々しく亜矢を見上げる。
亜矢はグっと唇を噛み締め、泣きたくなるような感情を抑えながら見下ろす。
コランは普段、亜矢に『側にいて』とは言わない。
『側にいたい』とは言っても、『側にいて』とは口にしない。
コランは、亜矢を縛る事は決してしないのだ。
朝、亜矢が学校に行く為に家を出る時だって、いつも笑顔で送りだしてくれる。
本当は、寂しいだろうに。
だからこそ、熱に浮かされた今、コランの口から本音がこぼれたのだろう。
「コランくん、ちょっと待っててね…!!」
亜矢はコランの手を優しく握り返すと部屋を出て、玄関に向かって走り出す。
乱暴に靴を履いて外へ出ると、すぐ右隣にあるドアの前に立つ。
そのドアの横には、『死神』という目立つ表札。
「死神っ……死神!!」
亜矢は我を忘れ、そのドアを懸命に叩く。
どうすれば、コランを助けてあげられるのか。
それを、グリアに聞くつもりだった。
少なくとも、グリアなら悪魔の事について知っていそうだと思ったのだ。
だが、何の反応もない。すでに部屋にグリアはいないのだろう。
亜矢は諦めると、今度は自分の部屋の左隣のドアに向かって走り出す。
左隣の部屋には、リョウが住んでいる。
だが亜矢はリョウの部屋のドアの前に立った時、ふと足を止めた。
冷静になって考えてみる。
すでにいつもの、学校に行く時間を過ぎてしまっている。
グリアもリョウも、学校に行く為に家を出ているのは当然な時間だ。
「学校…!!」
亜矢は独り言のように小さく言うと、急いで自分の部屋に戻る。
カバンと制服の上着を手に持つと、再び玄関を出る。
今日は登校する気なんてない。
だが、グリアとリョウを追う為に、亜矢は学校へと向かった。
亜矢はふと、隣で眠るコランに視線を向ける。
まだ、熟睡しているようだ。
亜矢はコランを起こさないように静かに起き上がる。
朝食の準備を終えたが、一向にコランは起きて来る様子はない。
いつもならこの時間、コランはすでにでテーブルについているはず。
亜矢は自分の部屋に行くと、ベッドで未だ眠り続けるコランに声をかける。
「コランくん、ご飯出来たけど……まだ寝る?」
すると、意外にもすでに目を覚ましていたらしいコランは小さく答えた。
「う………ん」
亜矢に背中を向けているので、コランの表情は分からない。
どこかいつものコランらしくない反応に、亜矢はベッドの側に寄るとしゃがみこんだ。
ふと何かに気付いた亜矢は、少し膝を立てて寝ているコランの顔を覗き込む。
寝息にしてはどこか、荒々しい息遣い。苦しそうに眉を歪めている。
「コラン……くんっ!?」
亜矢は小さく叫ぶと、コランの額に手を当てる。
「熱……い…!」
額に当てた手から、異常な程の熱が伝わる。
あきらかに発熱している。
(そんな……まさか、病気!?)
亜矢の心臓が、不安と戸惑いによって激しく鼓動する。
悪魔の平熱なんて知らないし、まして人間と同じように病気にかかるかなんて、そんな事はもちろん知らない。
だが、コランの紅潮した頬。苦しそうな呼吸。
何か、コランの身体に悪い異変が起きた事には変わりはない。
(どうしよう。そうだ…薬、解熱剤……!)
そう思って亜矢は立ち上がろうとしたが、コランがとっさに亜矢の片手に触れた。
触れられたコランの手から伝わる熱に、亜矢は引き止められた。
「どこ行くの?…側にいて、アヤ……」
薄く瞼を開け、赤色の瞳を潤ませながら、コランは弱々しく亜矢を見上げる。
亜矢はグっと唇を噛み締め、泣きたくなるような感情を抑えながら見下ろす。
コランは普段、亜矢に『側にいて』とは言わない。
『側にいたい』とは言っても、『側にいて』とは口にしない。
コランは、亜矢を縛る事は決してしないのだ。
朝、亜矢が学校に行く為に家を出る時だって、いつも笑顔で送りだしてくれる。
本当は、寂しいだろうに。
だからこそ、熱に浮かされた今、コランの口から本音がこぼれたのだろう。
「コランくん、ちょっと待っててね…!!」
亜矢はコランの手を優しく握り返すと部屋を出て、玄関に向かって走り出す。
乱暴に靴を履いて外へ出ると、すぐ右隣にあるドアの前に立つ。
そのドアの横には、『死神』という目立つ表札。
「死神っ……死神!!」
亜矢は我を忘れ、そのドアを懸命に叩く。
どうすれば、コランを助けてあげられるのか。
それを、グリアに聞くつもりだった。
少なくとも、グリアなら悪魔の事について知っていそうだと思ったのだ。
だが、何の反応もない。すでに部屋にグリアはいないのだろう。
亜矢は諦めると、今度は自分の部屋の左隣のドアに向かって走り出す。
左隣の部屋には、リョウが住んでいる。
だが亜矢はリョウの部屋のドアの前に立った時、ふと足を止めた。
冷静になって考えてみる。
すでにいつもの、学校に行く時間を過ぎてしまっている。
グリアもリョウも、学校に行く為に家を出ているのは当然な時間だ。
「学校…!!」
亜矢は独り言のように小さく言うと、急いで自分の部屋に戻る。
カバンと制服の上着を手に持つと、再び玄関を出る。
今日は登校する気なんてない。
だが、グリアとリョウを追う為に、亜矢は学校へと向かった。