死神×少女
亜矢が、薬草を入れて作ったスープをコランに飲ませてあげてから、わずか数十分後。
「コランくん、もうちょっと寝てた方がいいんじゃないの?」
「大丈夫、もう元気だぜ!ありがとう、アヤ!」
まるで何事も無かったかのようにすっかり元気になったコランは、さっきまでの反動と言わんばかりに力いっぱい亜矢に抱きつく。
ようやく事態が落ち着いてきたと思い、亜矢の肩から力が抜ける。
だが、今になって死神の姿が見えない事に気付いた。
いつの間に部屋を出て行ったのだろうか?
「……で、コランくんの兄って事は、あなたは本当の意味で魔王?」
床に堂々と足を組んで座るオランには、それだけで魔王としての威厳が感じられる。
亜矢はそんなオランの正面の床に腰を下ろし、あくまで対等の位置で向かい合う。
「ああ、オレは魔界の王、オラン。で、このガキが弟ってワケだ」
「ガキじゃないーー!!」
いちいち反応するコラン。そういう所がまだ子供なのだが、それもまた愛嬌だ。
「あたしと契約しようとしたのは、やっぱりコランくんを連れ帰す為なの?」
コランが口を閉ざした。ぎゅっと、亜矢を抱く手に力が入る。
「ああ?まあ、最初はな。このガキが生意気にも人間と契約したって言うからよ、オレも興味を持ったワケだが…」
オランは、ズイっと顔を亜矢に近寄せ、間近で亜矢をその眼で捕らえる。
亜矢は思わず身を引きそうになったが、オランの顔を見て気付いた。
この人の顔が、誰かに似ていると思った事。
赤の瞳。褐色の肌。そうか、コランに似ていたのだと。
やっぱり兄弟なんだなと、それだけで納得してしまう。
「それが、なかなかいい女だったんでな。オレが手に入れたくなった」
「なっ!なっ!?」
こんな間近で見つめられ、ストレートに言われては亜矢もさすがに戸惑う。
「だ、だって!あたしと契約したら、今度はあなたが魔界に帰れなくなるんじゃ!?」
「オレは魔王だぜ?魔界の掟なんざ関係ねえ」
「そ、それに魔王がのんびり人間界に来てていいわけ!?王サマでしょ?」
「魔界の事なら、ディアに任せてあるぜ」
何ていい加減な魔王なのか!?と思いつつも、完全に亜矢はオランのペースに飲まれていた。
すると今度は、その視線で捕らえながら、オランは亜矢の頬に手を触れた。
先程の、口付け前の時みたいに、柔らかく。
亜矢がハっとして目だけをオランに合わせる。
「オレ様の妃にしてやるぜ、亜矢。魔界に連れ帰るのはあんたの方だ」
そう言うオランの透き通った赤の瞳。
死神から与えられたこの心臓から伝わる、彼の心と意志。
オランは真剣なのだ。唐突ではあるが本気で今、亜矢を口説いている。
だが、そんな雰囲気の間に割って入ったのはコラン。
「ダメーー!!兄ちゃん、ダメーー!!」
コランは必死になってオランと亜矢の間に入りこみ、オランの体を亜矢から離そうと力いっぱい押し返す。
「コランくん?」
今までにないコランの行動に驚きつつも、その仕草がどこか可愛らしく感じ、亜矢は小さく微笑む。
コランにとっては笑い事ではないのだが。
コランは初めて、焼きもちを妬いたのだ。自覚はないが。
「ガキが、生意気に入ってくるんじゃねえよ」
「ガキじゃないってば!アヤはオレの契約者だ!だからオレが側にいる!」
何かを言い合う兄弟。だが、亜矢が聞きたいのはそんな口論ではなくて。
「その事なんだけど、魔王」
オランとコランの動きが止まり、亜矢を見る。
「どうしてもコランくんを連れて帰らなきゃいけないの?」
「コランくん、もうちょっと寝てた方がいいんじゃないの?」
「大丈夫、もう元気だぜ!ありがとう、アヤ!」
まるで何事も無かったかのようにすっかり元気になったコランは、さっきまでの反動と言わんばかりに力いっぱい亜矢に抱きつく。
ようやく事態が落ち着いてきたと思い、亜矢の肩から力が抜ける。
だが、今になって死神の姿が見えない事に気付いた。
いつの間に部屋を出て行ったのだろうか?
「……で、コランくんの兄って事は、あなたは本当の意味で魔王?」
床に堂々と足を組んで座るオランには、それだけで魔王としての威厳が感じられる。
亜矢はそんなオランの正面の床に腰を下ろし、あくまで対等の位置で向かい合う。
「ああ、オレは魔界の王、オラン。で、このガキが弟ってワケだ」
「ガキじゃないーー!!」
いちいち反応するコラン。そういう所がまだ子供なのだが、それもまた愛嬌だ。
「あたしと契約しようとしたのは、やっぱりコランくんを連れ帰す為なの?」
コランが口を閉ざした。ぎゅっと、亜矢を抱く手に力が入る。
「ああ?まあ、最初はな。このガキが生意気にも人間と契約したって言うからよ、オレも興味を持ったワケだが…」
オランは、ズイっと顔を亜矢に近寄せ、間近で亜矢をその眼で捕らえる。
亜矢は思わず身を引きそうになったが、オランの顔を見て気付いた。
この人の顔が、誰かに似ていると思った事。
赤の瞳。褐色の肌。そうか、コランに似ていたのだと。
やっぱり兄弟なんだなと、それだけで納得してしまう。
「それが、なかなかいい女だったんでな。オレが手に入れたくなった」
「なっ!なっ!?」
こんな間近で見つめられ、ストレートに言われては亜矢もさすがに戸惑う。
「だ、だって!あたしと契約したら、今度はあなたが魔界に帰れなくなるんじゃ!?」
「オレは魔王だぜ?魔界の掟なんざ関係ねえ」
「そ、それに魔王がのんびり人間界に来てていいわけ!?王サマでしょ?」
「魔界の事なら、ディアに任せてあるぜ」
何ていい加減な魔王なのか!?と思いつつも、完全に亜矢はオランのペースに飲まれていた。
すると今度は、その視線で捕らえながら、オランは亜矢の頬に手を触れた。
先程の、口付け前の時みたいに、柔らかく。
亜矢がハっとして目だけをオランに合わせる。
「オレ様の妃にしてやるぜ、亜矢。魔界に連れ帰るのはあんたの方だ」
そう言うオランの透き通った赤の瞳。
死神から与えられたこの心臓から伝わる、彼の心と意志。
オランは真剣なのだ。唐突ではあるが本気で今、亜矢を口説いている。
だが、そんな雰囲気の間に割って入ったのはコラン。
「ダメーー!!兄ちゃん、ダメーー!!」
コランは必死になってオランと亜矢の間に入りこみ、オランの体を亜矢から離そうと力いっぱい押し返す。
「コランくん?」
今までにないコランの行動に驚きつつも、その仕草がどこか可愛らしく感じ、亜矢は小さく微笑む。
コランにとっては笑い事ではないのだが。
コランは初めて、焼きもちを妬いたのだ。自覚はないが。
「ガキが、生意気に入ってくるんじゃねえよ」
「ガキじゃないってば!アヤはオレの契約者だ!だからオレが側にいる!」
何かを言い合う兄弟。だが、亜矢が聞きたいのはそんな口論ではなくて。
「その事なんだけど、魔王」
オランとコランの動きが止まり、亜矢を見る。
「どうしてもコランくんを連れて帰らなきゃいけないの?」