多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
第33話 どちら様?
料理長のレイミーさんにお米を託すと、再度お米の炊き方を伝えて部屋へと戻った。
時計を見ると、6時半。
「う〜ん……今から寝直してもなぁ……中途半端かも知れない」
朝食が始まるのは7時。後30分は時間がある。
「あ〜あ……こんなとき、スマホでもあれば時間つぶしが……」
そこまで言いかけて、ふと気付いた。
「あ、そう言えばスマホにオフラインでも遊べるゲームをインストールしていたんだっけ……よし、今度はスマホをこっちの世界に持ち込むことにしょう。今の内に何が必要かメモに書き残そうっと」
思い立つと早速机に向かい、メモを取り出した。
「日本語で書けば他の人たちには読めないものね〜。えっと、まずはスマホでしょ。あ、充電器もいるな……それに……」
ブツブツ呟きながら、メモに書きなぐっていく。
不思議なことにステラの記憶は一切無いのに、私は何故かこの国の言葉も文字も読むことが出来たのだ。
「……よし、書けた!」
早速引き出しにしまい、再び時計を見るとそろそろ7時になる頃だった。
「さてっと。それじゃ、モーニングを食べに行こうかな」
そして私はダイニングルームへ向かった。
お味噌汁と納豆のことを渇望しながら――
「どうだ? ステラ。今朝は良く眠れたか?」
お上品な朝食を食べていると、父が尋ねてきた。
「はい、お陰様でばっちり眠れました」
何しろ、今回も色々な戦利品をゲット出来たのだから。
「そうなのか? でも本当にステラはまるで人が変わったかのように明るくなってくれたようだ。あの日はあんなに落ち込んでいたのに」
「そうね。確かにあの時は……本当に心配したわ。もうこれ以上、生きていたくないーなんて暴れていたのが嘘みたいだわ」
「……え?」
母の言葉に思考が一瞬フリーズする。
これ以上、生きていたくない? ステラがそんなことを言ったなんて……。
この身体の記憶が全くない私には寝耳に水だ。
「あ、あの……その話ですが……」
質問しかけて踏みとどまる。記憶に無いなんて不用意に口にすれば、再び医者を呼ぶ騒ぎになってしまいかねない。
「「どうかしたの(か)?」」
両親が同時に尋ねてくる。
「い、いえ。何でもありません。どうか気にしないで下さい」
とりあえず、今は何も聞かないでおこう。
そのうち、原因が判明する……かもしれない。
益々深まる疑問を抱えながら、私は食事を終えた――
****
8時――
「どうぞ、ステラお嬢様」
「ありがとう、レイミー」
エントランスで私はレイミーからバスケットを受けとった。
「それで? 中身は何?」
「はい、お嬢様。正真正銘、中身はアレでございます」
「そう、それなら問題ないわ」
レイミーの言葉に満足して頷いた。
「今回は前回以上にふっくらツヤツヤに炊き上げることに成功しました」
「本当? お礼に大学から帰ったら、新しいブツ(調味料)を見せてあげるわね?」
「ありがとうございます!」
レイミーが嬉しそうに返事をする。
……傍から見れば、怪しい会話をしている2人だと思われかねない。だが、これは仕方ないこと。
だって、お米も調味料もこの世界には存在しないものなのだから。不用意に口にするわけにはいかないのだ。
「それでは行ってくるわね」
「はい、お嬢様。あ、今扉を開けましょう」
レイミーが扉を開け放すと、眼前に目もくらむような黒塗りの馬車に金の宝飾が施された馬車が待機していた。
しかも驚いたことに、馬は白馬である。
「ステラ様、お待ちしておりました」
御者台の人物が帽子を外して頭を下げてきた。
「は、はぁ……お待たせ致しました」
恐縮しながらお辞儀すると、馬車の扉が開かれて青年が降りてきた。
「え……どちら様……?」
私はその青年を呆けたように見上げた――
時計を見ると、6時半。
「う〜ん……今から寝直してもなぁ……中途半端かも知れない」
朝食が始まるのは7時。後30分は時間がある。
「あ〜あ……こんなとき、スマホでもあれば時間つぶしが……」
そこまで言いかけて、ふと気付いた。
「あ、そう言えばスマホにオフラインでも遊べるゲームをインストールしていたんだっけ……よし、今度はスマホをこっちの世界に持ち込むことにしょう。今の内に何が必要かメモに書き残そうっと」
思い立つと早速机に向かい、メモを取り出した。
「日本語で書けば他の人たちには読めないものね〜。えっと、まずはスマホでしょ。あ、充電器もいるな……それに……」
ブツブツ呟きながら、メモに書きなぐっていく。
不思議なことにステラの記憶は一切無いのに、私は何故かこの国の言葉も文字も読むことが出来たのだ。
「……よし、書けた!」
早速引き出しにしまい、再び時計を見るとそろそろ7時になる頃だった。
「さてっと。それじゃ、モーニングを食べに行こうかな」
そして私はダイニングルームへ向かった。
お味噌汁と納豆のことを渇望しながら――
「どうだ? ステラ。今朝は良く眠れたか?」
お上品な朝食を食べていると、父が尋ねてきた。
「はい、お陰様でばっちり眠れました」
何しろ、今回も色々な戦利品をゲット出来たのだから。
「そうなのか? でも本当にステラはまるで人が変わったかのように明るくなってくれたようだ。あの日はあんなに落ち込んでいたのに」
「そうね。確かにあの時は……本当に心配したわ。もうこれ以上、生きていたくないーなんて暴れていたのが嘘みたいだわ」
「……え?」
母の言葉に思考が一瞬フリーズする。
これ以上、生きていたくない? ステラがそんなことを言ったなんて……。
この身体の記憶が全くない私には寝耳に水だ。
「あ、あの……その話ですが……」
質問しかけて踏みとどまる。記憶に無いなんて不用意に口にすれば、再び医者を呼ぶ騒ぎになってしまいかねない。
「「どうかしたの(か)?」」
両親が同時に尋ねてくる。
「い、いえ。何でもありません。どうか気にしないで下さい」
とりあえず、今は何も聞かないでおこう。
そのうち、原因が判明する……かもしれない。
益々深まる疑問を抱えながら、私は食事を終えた――
****
8時――
「どうぞ、ステラお嬢様」
「ありがとう、レイミー」
エントランスで私はレイミーからバスケットを受けとった。
「それで? 中身は何?」
「はい、お嬢様。正真正銘、中身はアレでございます」
「そう、それなら問題ないわ」
レイミーの言葉に満足して頷いた。
「今回は前回以上にふっくらツヤツヤに炊き上げることに成功しました」
「本当? お礼に大学から帰ったら、新しいブツ(調味料)を見せてあげるわね?」
「ありがとうございます!」
レイミーが嬉しそうに返事をする。
……傍から見れば、怪しい会話をしている2人だと思われかねない。だが、これは仕方ないこと。
だって、お米も調味料もこの世界には存在しないものなのだから。不用意に口にするわけにはいかないのだ。
「それでは行ってくるわね」
「はい、お嬢様。あ、今扉を開けましょう」
レイミーが扉を開け放すと、眼前に目もくらむような黒塗りの馬車に金の宝飾が施された馬車が待機していた。
しかも驚いたことに、馬は白馬である。
「ステラ様、お待ちしておりました」
御者台の人物が帽子を外して頭を下げてきた。
「は、はぁ……お待たせ致しました」
恐縮しながらお辞儀すると、馬車の扉が開かれて青年が降りてきた。
「え……どちら様……?」
私はその青年を呆けたように見上げた――