多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
第86話 悪女はどちら?
この世界……? カレンは今、『この世界』って言ったよね?
カレンは今もうわ言のように呟いている。
「そうよ……この世界前世にプレイしていた『イケメン天国、今日は誰と恋をする?』の乙女ゲームの世界で、私はヒロインのカレンなのに……そのヒロインが皆から嫌われているって、ありえないでしょう? 大体なんで悪役令嬢のくせに、メインヒーローのエドワードを奪うのよ……」
「はぁ? 何言ってるの? この小娘は」
魔女はブツブツ呟いているカレンを呆れた様子で見ている。
けれど私は聞き覚えのある言葉と、ベタな題名に鳥肌を立てていた。
何? 乙女ゲームの世界? それにイケメン天国なんて……なんって陳腐な題名なのだろう?
けれど、これで確定した。
カレンも私と同様に、『魂の交換』が行われたのだ。恐らく以前の身体の持ち主は……多分死んでしまったのだろう。そして、今カレンの身体の中に入っている謎の人物も……恐らく死んでしまったのだろう。
「そうよ……だから、私はゲームに出てくる魔女を尋ねてアイテムを手に入れて……周りから好かれるようになったはずなのに……彼らは皆私の攻略対象だったのに……それなのに、何でよ! そもそもステラ! 悪女なら悪女らしく振る舞いなさいよ! 何でゲームとは違う行動を取っているのよ!」
カレンは私を指差し、鋭い目で睨みつけてきた。
もう流石にこれ以上黙っていることは出来なかった。
「いい加減にしなさい、カレン。さっきから乙女ゲームがどうとか言ってるけどここはゲームの世界じゃない。リアルに生きている人たちが暮らしている世界なのよ? 皆自分の意思を持っているの。自分の思う通りにいかないからって、八つ当たりするのはやめてくれる?」
そう。
ここにいる人達はゲームに出てくるキャラクターではない。
生きて、自分の意志を持って行動しているのだから。
「何ですって……? そもそも、あんたの存在自体が怪しいのよ! その口ぶりだと、あんたも私と同じ転生者じゃないの!? 正直に言いなさいよ!」
そしてカレンは私に掴みかかってくると、両手で髪の毛を掴んで引っ張ってきた。
「イタッ!! 髪の毛を引っ張るなんて反則でしょ!」
「うるさい! 悪女め!」
「誰が悪女よ!!」
「あんたのことに決まっているでしょう!!」
あまりにも強く髪を引っ張るものだから、痛みのあまり目尻に涙が浮かぶ。
一体、エドは何をしているのよ!!
「ちょ、ちょっと!! 何してるのよ! ステラを離しなさいよ!」
今まで傍観していた魔女が、慌ててカレンを止めに入ろうとしたその時。
「やめろ! カレンッ!!」
ようやくエドが店の中に飛び込んできた。
「エドワード様!」
「あ! エドッ!」
「ちょっと! 悪女のくせに、図々しくエドなんて呼ぶんじゃないわよ!」
更にカレンは髪を引っ張る。
「イタタタ!! やめてってば!」
そこへエドが私とカレンの間に割り込んでくると、彼女の腕を掴んで髪の毛から手を離させた。
「カレン! 俺のステラに何をするんだ!」
「「はぁっ!?」」
私とカレンの声が同時にハモる。
「ちょっと! 誰が俺のステラよ!」
「エドワード様! あんな悪女にたぶらかされてしまったのですか!?」
ヒステリックに喚くカレンに対し、エドは私の訴えを無視し、大真面目に頷く。
「ああ、そうだ。俺は見事にステラにたぶらかされてしまった。今ではもう彼女に夢中だ」
そしてあろうことか、エドは私を強く抱きしめてきた。
「な、何するんですか!! エドッ!」
「エドワード様!! そんな悪女のどこがいいんですか!!」
ヒステリックに喚くカレン。
カレンはどうしても私を悪女に仕立てたいらしい。
「俺からしてみればカレン、君のほうが余程悪女に見えるよ。カレン」
「そ、そんな……ひ、ひどいっ!」
カレンは目に涙を浮かべ、私を一瞬睨みつけると走り去っていった――
カレンは今もうわ言のように呟いている。
「そうよ……この世界前世にプレイしていた『イケメン天国、今日は誰と恋をする?』の乙女ゲームの世界で、私はヒロインのカレンなのに……そのヒロインが皆から嫌われているって、ありえないでしょう? 大体なんで悪役令嬢のくせに、メインヒーローのエドワードを奪うのよ……」
「はぁ? 何言ってるの? この小娘は」
魔女はブツブツ呟いているカレンを呆れた様子で見ている。
けれど私は聞き覚えのある言葉と、ベタな題名に鳥肌を立てていた。
何? 乙女ゲームの世界? それにイケメン天国なんて……なんって陳腐な題名なのだろう?
けれど、これで確定した。
カレンも私と同様に、『魂の交換』が行われたのだ。恐らく以前の身体の持ち主は……多分死んでしまったのだろう。そして、今カレンの身体の中に入っている謎の人物も……恐らく死んでしまったのだろう。
「そうよ……だから、私はゲームに出てくる魔女を尋ねてアイテムを手に入れて……周りから好かれるようになったはずなのに……彼らは皆私の攻略対象だったのに……それなのに、何でよ! そもそもステラ! 悪女なら悪女らしく振る舞いなさいよ! 何でゲームとは違う行動を取っているのよ!」
カレンは私を指差し、鋭い目で睨みつけてきた。
もう流石にこれ以上黙っていることは出来なかった。
「いい加減にしなさい、カレン。さっきから乙女ゲームがどうとか言ってるけどここはゲームの世界じゃない。リアルに生きている人たちが暮らしている世界なのよ? 皆自分の意思を持っているの。自分の思う通りにいかないからって、八つ当たりするのはやめてくれる?」
そう。
ここにいる人達はゲームに出てくるキャラクターではない。
生きて、自分の意志を持って行動しているのだから。
「何ですって……? そもそも、あんたの存在自体が怪しいのよ! その口ぶりだと、あんたも私と同じ転生者じゃないの!? 正直に言いなさいよ!」
そしてカレンは私に掴みかかってくると、両手で髪の毛を掴んで引っ張ってきた。
「イタッ!! 髪の毛を引っ張るなんて反則でしょ!」
「うるさい! 悪女め!」
「誰が悪女よ!!」
「あんたのことに決まっているでしょう!!」
あまりにも強く髪を引っ張るものだから、痛みのあまり目尻に涙が浮かぶ。
一体、エドは何をしているのよ!!
「ちょ、ちょっと!! 何してるのよ! ステラを離しなさいよ!」
今まで傍観していた魔女が、慌ててカレンを止めに入ろうとしたその時。
「やめろ! カレンッ!!」
ようやくエドが店の中に飛び込んできた。
「エドワード様!」
「あ! エドッ!」
「ちょっと! 悪女のくせに、図々しくエドなんて呼ぶんじゃないわよ!」
更にカレンは髪を引っ張る。
「イタタタ!! やめてってば!」
そこへエドが私とカレンの間に割り込んでくると、彼女の腕を掴んで髪の毛から手を離させた。
「カレン! 俺のステラに何をするんだ!」
「「はぁっ!?」」
私とカレンの声が同時にハモる。
「ちょっと! 誰が俺のステラよ!」
「エドワード様! あんな悪女にたぶらかされてしまったのですか!?」
ヒステリックに喚くカレンに対し、エドは私の訴えを無視し、大真面目に頷く。
「ああ、そうだ。俺は見事にステラにたぶらかされてしまった。今ではもう彼女に夢中だ」
そしてあろうことか、エドは私を強く抱きしめてきた。
「な、何するんですか!! エドッ!」
「エドワード様!! そんな悪女のどこがいいんですか!!」
ヒステリックに喚くカレン。
カレンはどうしても私を悪女に仕立てたいらしい。
「俺からしてみればカレン、君のほうが余程悪女に見えるよ。カレン」
「そ、そんな……ひ、ひどいっ!」
カレンは目に涙を浮かべ、私を一瞬睨みつけると走り去っていった――