俺様CEOの子どもを出産したのは極秘です


「ねえ、桃花ちゃん、だったら、俺と一緒にデートに行ってくれたってことはさ……俺に脈はあるってこと?」

 脈アリかどうか尋ねてきつつも自信ありげな総悟の顔が、桃花の眼前にあった。

「社長、それは……」

 彼女の瞳が波のように揺れ動くと、彼がクスリを笑んだ。

「ああ、君が嘘がつけない子で本当に良かった。この間はマンションでごめん、やり直させてほしいんだ」

 この間とは、きっと桃花が総悟のマンションに看病に行った時のことだろう。

「やり直し、とは?」

「やり直しは……やり直しだよ」

 すると、彼の顔が近づいてきて、唇を塞がれてしまった。

(私、総悟さんからキスされてる)

 彼が何度も角度を変えて、彼女に口づけてくる。
 鼓動が高鳴っていく。
 二年ぶりに好きな人からキスをされて夢見心地になった。

「ん……」

「桃花ちゃん。ねえ、もっと俺のことを見て」

 二人の間で熱い吐息が交わされる。

「社長……あ……総悟さ……」

 彼の分厚い舌が、彼女の唇の中に侵入してくる。

「ああ、もっと、ねえ、口を開いて、俺を受け入れて……」

 どれぐらいの時間が経っただろうか。
 コーヒーメーカーが沸騰終了を音で知らせてくる。

「コーヒーが出来て……あっ……」

「後で淹れてよ……ねえ、今は君を味合わせてもらえたら、それで良いからさ」

 言葉通り、味わうように、彼の舌が彼女の口の中を丹念に這いずりまわる。
 彼に口の中を犯されていると、彼女の口の中から甘ったるい声が漏れ出た。

「ふあっ……ああっ……」

「もうずっと欲しかったんだ。君の中、甘くて美味しい」

 このまま快楽に身を委ねたくなってしまう。
 だけど、ここは職場だし、そろそろ就業開始時間だ。
 桃花は、総悟の頬を両手で包み込むと、なんとか唇同士を引き剥がした。
 二人の間に銀糸がかかる。
 桃花は、それを手の甲で拭いながら、潤んだ瞳で総悟へと告げる。

「もう十分過ぎました。ここは職場で……しかも、今は就業時間内で……」

「じゃあ、時間内じゃなかったら良いってこと……?」

「時間外ならまだ……」

 まだ……どうだというのだろう?
 自分で答えておいて自問してしまう。
 桃花の頬がますます真っ赤に染まっていく。

「だったら、今日の君の就業開始はあと一時間後からに変更するよ」

 総悟の指がブラウスの釦をゆっくりと外していく。
 鎖骨を撫ぜながら進まれると、身体がビクンと大きく反応した。


< 105 / 189 >

この作品をシェア

pagetop