俺様CEOの子どもを出産したのは極秘です


 総悟が眉を顰めて不快感を露わにした。 

「はあ?」

「嵯峨野が何を考えているのかは知らない。私はどちらの味方にもなるつもりはないがな」

「しつこいんだよ、あの男、そういえば、取引に来たわけでも何でもないのに、たまにうろついてるって、竹芝が言ってたな。うちを辞めて嵯峨野商事に行って養子に入ったりしたかと思うと、会うたびに本当に取引先かよって態度とってくるし……わりとうんざりしてるんだけど」

「そうは言うな。総悟、お前も五十歩百歩だろう。あれはあれで嘆いているんだよ」

 会長にぴしゃりと告げられた総悟が口を尖らせていた。

(嵯峨野社長、元々は二階堂商事の社員だったのね)

 二年前に桃花に嘘を吹き込んできた相手でもある。

(今度総悟さんに相談しておいた方が良いかもしれない)

 会長が厳かな口調のまま続けた。

「あとは、二年前の桃花さん失踪の際に、情報を意図的に操作して混乱させていた者がいる可能性がある」

「はあ? 桃花ちゃんがずっと見つからなかったのに関わっている人物がいるってこと? 誰が? 何のためにそんなことをしたんだよ?」

「それは知らん。会社経営者のお前を引きずりおろしたい奴はたくさんいるだろうさ。とにかく桃花さんや獅童は巻き込むな。気をつけておけ」

 そうして、二階堂会長が獅童に今までに見たことがないぐらい柔和な笑顔を見せる。

「じいじが甘いお菓子を準備しておくから、また顔を見せに来てごらん」

 そうして、総悟と桃花と獅童の三人は、二階堂家から去ったのだった。


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