俺様CEOの子どもを出産したのは極秘です
33 嵯峨野武雄
桃花と獅童は、嵯峨野機器が運営する工場へと連れてこられていた。
作業場からは油や焦げた金属の匂いが漂っている。そこを抜けた先には小さなプレハブ小屋のような五階階建ての建物があり、その中へと誘導された。
外はわりと錆びたトタンで出来ているだけの印象があったが、中はわりと広く、それぞれの階に部屋は四室ぐらいはありそうだった。
一番最上階である五階の部屋へと連れて行かれる。室内はハイテクな機器に囲まれており、清潔なオフィスという印象だった。
そこを抜けて、古めかしいランプが飾られた薄暗い場所へと桃花と獅童は連れて来られて、ソファに座らされていた。
普段は職員の休憩スペースのような場所として利用されているのだろうか、備え付けのテレビがあったが、電源を付ける気にはなれなかった。
幼いながらに異常事態に気付いているのか、獅童がぐずっていた。
「まま……ひっく……」
「獅童……」
嵯峨野の部下たちは紳士的な対応であり、幸いなことに乱暴な扱いは受けていない。
それどころか、獅童が泣きじゃくりそうなのを一生懸命あやそうとしてくれている人までいた。
(上司の命令とはいえ、さすがに非人道的な行為には賛成できないのかもしれない。最悪の事態にはならないかもしれないけれど……)
いくら部下たちがまともな思考とはいえ、上司がおかしいことなんて世の中いくらでもある。
(絶対に油断しちゃダメ。そもそも部下の人たちが優しくするのだって、私を油断させるためかもしれないんだから)
スマホなどの連絡手段が入っているバッグなどは、嵯峨野の部下たちによって、一式回収されてしまっている。
桃花はぐずる獅童のことをぎゅっと抱きしめる。
「大丈夫よ、獅童、ママが守ってあげるからね」
「まま……」
獅童のリュックは回収されていなかった。桃花は、中に忍ばせていたクッキーのお菓子を手にとると、獅童に食べさせてあげる。そのうち、美味しいからか、自分からも袋に手を入れて食べはじめた。
「おいしい、くっきー」
小腹が満たされたのか、獅童がうつらうつらしはじめる。
桃花が抱っこして、身体をトントンと叩いてあげていると、瞼がトロンと落ちてきて、そのうち寝息を立てはじめた。
「寝ちゃったわね」
部屋の中に備え付けてある簡易ベッドの上に、そっと獅童を横たわらせた。小さな手の中には総悟が昨日プレゼントしてくれていた黒いクマのキーホルダーがあった。
(総悟さん、もう電話会議は終わったのかしら? だとしたら、私たちがマンションにまだ帰ってないって気づいてくれている?)
窓の外へと視線をやれば、もうすっかり暗くなってしまっている。
(外側から鍵を掛けられてしまっている。食事が来るかどうかも分からないわ。どうにかして部屋を脱出できるか調べなきゃ)
そうして、桃花が室内をキョロキョロと歩いていると、扉が開いた。
作業場からは油や焦げた金属の匂いが漂っている。そこを抜けた先には小さなプレハブ小屋のような五階階建ての建物があり、その中へと誘導された。
外はわりと錆びたトタンで出来ているだけの印象があったが、中はわりと広く、それぞれの階に部屋は四室ぐらいはありそうだった。
一番最上階である五階の部屋へと連れて行かれる。室内はハイテクな機器に囲まれており、清潔なオフィスという印象だった。
そこを抜けて、古めかしいランプが飾られた薄暗い場所へと桃花と獅童は連れて来られて、ソファに座らされていた。
普段は職員の休憩スペースのような場所として利用されているのだろうか、備え付けのテレビがあったが、電源を付ける気にはなれなかった。
幼いながらに異常事態に気付いているのか、獅童がぐずっていた。
「まま……ひっく……」
「獅童……」
嵯峨野の部下たちは紳士的な対応であり、幸いなことに乱暴な扱いは受けていない。
それどころか、獅童が泣きじゃくりそうなのを一生懸命あやそうとしてくれている人までいた。
(上司の命令とはいえ、さすがに非人道的な行為には賛成できないのかもしれない。最悪の事態にはならないかもしれないけれど……)
いくら部下たちがまともな思考とはいえ、上司がおかしいことなんて世の中いくらでもある。
(絶対に油断しちゃダメ。そもそも部下の人たちが優しくするのだって、私を油断させるためかもしれないんだから)
スマホなどの連絡手段が入っているバッグなどは、嵯峨野の部下たちによって、一式回収されてしまっている。
桃花はぐずる獅童のことをぎゅっと抱きしめる。
「大丈夫よ、獅童、ママが守ってあげるからね」
「まま……」
獅童のリュックは回収されていなかった。桃花は、中に忍ばせていたクッキーのお菓子を手にとると、獅童に食べさせてあげる。そのうち、美味しいからか、自分からも袋に手を入れて食べはじめた。
「おいしい、くっきー」
小腹が満たされたのか、獅童がうつらうつらしはじめる。
桃花が抱っこして、身体をトントンと叩いてあげていると、瞼がトロンと落ちてきて、そのうち寝息を立てはじめた。
「寝ちゃったわね」
部屋の中に備え付けてある簡易ベッドの上に、そっと獅童を横たわらせた。小さな手の中には総悟が昨日プレゼントしてくれていた黒いクマのキーホルダーがあった。
(総悟さん、もう電話会議は終わったのかしら? だとしたら、私たちがマンションにまだ帰ってないって気づいてくれている?)
窓の外へと視線をやれば、もうすっかり暗くなってしまっている。
(外側から鍵を掛けられてしまっている。食事が来るかどうかも分からないわ。どうにかして部屋を脱出できるか調べなきゃ)
そうして、桃花が室内をキョロキョロと歩いていると、扉が開いた。