俺様CEOの子どもを出産したのは極秘です
14 総悟の本心(総悟side)
十年前。
病院の待合室にて。
高校二年生の時、二階堂総悟は色んな大事なものを失ってしまった。
端から見れば軽い怪我を負った男子高校生。だけど、心の中は形容しがたいほどにぐちゃぐちゃで、もがき苦しんでいたのだった。
『俺は……』
呆然とソファに座っていたら、目の前で何者かが総悟のことを罵りはじめた。
『どうしてお前が……!? …………!』
相手の言葉がまるで異国の言葉のようだ。わりと語学堪能なはずなのに、それでも理解ができないぐらい、相手が何を言っているのか理解できなかった。
だけど、突然、相手の声が鮮明に分かった。
『お前なんか、生きている価値がないのに!』
激昂する何者かに総悟は胸倉を掴まれてしまう。
その時……
『生まれてこなければ良かった人間なんて、この世にいるはずがない』
二人の間に割って入ってきたのは、白いぬいぐるみを愛おしそうに抱える少女。
まるで天使が助けにきてくれたようだと、当時の総悟は思ったのだった。