俺様CEOの子どもを出産したのは極秘です
19 総悟の懺悔
「ちょっと、待って……!」
「待たない……」
「ん……」
総悟の唇が桃花の首の柔らかな部分を吸い始めた。
(本当に、どうしたっていうの……!?)
彼の手が彼女の太腿を撫で始めると、彼女の唇から甘ったるい声が漏れ出る。
「んんっ、あっ……やめっ……」
総悟にスイッチでも入ったのか、桃花の首筋を甘噛みする。
「せっかくわざわざ俺のところに戻ってきたんだ。もうどこにも逃がさない……どうせ嫌われてるんだ。だったら、とことん嫌われた方がマシだ」
彼の手が彼女の背を撫で始めた。
(前はこんなことを強引にする人じゃなかったのに……)
「やめてっ……」
どうにか抵抗しようとしていたら、総悟が呻くように告げた。
「約束を守ってくれなかった君の言うことなんか……もう聞きたくない」
「あ……」
桃花の胸がズキンと痛むと同時に、かつて交わした約束が脳裏に浮かぶ。
『桃花ちゃん、ねえ、これから先もずっと俺だけだって誓ってくれる? ……俺もこれから先、君だけだって誓うから』
『桃花ちゃんには、ずっとずっとそばにいてほしい』
『ううん、違うよ……上司だとか部下だとか関係なく、俺のそばにいてほしいんだ』
優しかった総悟が、今こんな風になってしまったのは……
(私がこの人との約束を破ったせい……?)
「俺だけが必死に約束を守って……君はどうせ忘れてしまってるのに……」
「んんっ……」
彼の指がブラウスの一番上と二番目の釦を器用に外した。
彼の吐息が彼女の胸元にかかると、柔肌を跡が残るぐらいきつく吸われる。
「逃げられるぐらいなら、はじめっからこうしておけば良かったんだ」
桃花はショックを受けつつも、総悟の性急な手つきに激しく求められると、どこかで拒めない自分もいて……心がまるで振り子のように大きく揺れ動く。
だけど、彼の瞳を見て彼女はハッとする。
(どうして、この人はこんなに……)
……こんなに泣きそうな顔をしているんだろう。
桃花は心の中で流されそうな自身を叱咤した。
(総悟さんは自暴自棄になってるんだわ……このままだと、総悟さんが傷ついちゃう……!)
彼の指がブラウスの三番目の釦にかかった、その時――
「……こんなことしちゃダメです!」
桃花が声を張り上げると、総悟の動きがピタリと止まった。
「あ……」
総悟は叱られた子どものような表情を浮かべていた。
翡翠色の瞳が忙しなく揺れ動いた後、彼女の身体の上からさっと退く。
「すまない、言い訳だが、寝不足で判断力が低下していた。悪かった、もう帰って良い」
髪をくしゃりとかき上げながら、総悟は自身のベッドに戻る。