俺様CEOの子どもを出産したのは極秘です
「今度はちゃんとそばにいますし、離れませんから」
「それは……専属秘書として……?」
「はい、もちろん。今日は定時では帰ってしまいますけど……それまではちゃんとここにいますし」
すると、総悟がポツポツと口を開く。
「これからは……? 明日はちゃんと仕事に来るの?」
「明日は土曜なので来ません」
「……じゃあ月曜日は?」
「月曜日にもちゃんと来ます」
「火曜日以降も?」
「火曜日以降も来ますよ。この二週間ぐらい、毎日出勤したでしょう」
すると、しばらくの間、総悟はだんまりになった後、桃花の手をぎゅっと握り返した。
「分かった……もうどこにも行かないでね。あと、ひどいこと言ったのに許してくれてありがとう……」
それだけ言うと、安心したかのように総悟は再び眠りに就いた。
彼の手から逃れようとしたのだけれど、寝ているのに握る力が強くて抜け出せなくなってしまった。
桃花は黙って総悟と手を繋いだまま過ごす。
(掃除の続きをしようと思ってたんだけど……そういえば、私の履歴書はどうして総悟さんの家にあったんだろう?)
桃花は部屋の中をきょろきょろと見渡す。
マンションの中に総悟以外の誰かが暮らしている気配はない。
(てっきり、総悟さんは写真の女性と結婚していると思っていたのに……)
仕事中だというのに桃花もだんだんと眠たくなってきた。
「……桃花ちゃん」
総悟が寝言で名前を呼んできたので、心臓がドキンと跳ねる。
(もしかして、私が離れた後に、総悟さんも私のことが好きだって気づいたりとか……そんな都合の良い話は存在しないか……)
だけど、総悟からは専属秘書としては大事に思われていたということだろう。
「私ったら現金ね……それだけでも十分嬉しいだなんて……」
総悟が再び眠りに就いた後、獅童のお迎えの時間が来るまでの間、桃花はずっと総悟のそばで過ごしたのだった。