フェンリルに捧ぐ愛の契り 〜旦那さまを溺愛してもいいのは私だけです! 耳を食みたいのです!〜
にっこりと楽しそうに笑うルーナにリアムは身を震わせる。
ぶるぶると首を横に振り、足早に前へと出てしまった。
アクティブでだいたいは器用にこなすルーナ。
だが料理だけは放っておくと何をしでかすかわからないため、リアムは今晩が恐ろしいと唸っていた。
「キャッ!?」
清廉された王城で生まれ育ったため、まだまだルーナは足元に無頓着だった。
木の根につまづき、転倒しそうになり身を固くする。
だがリアムが身を挺してルーナの身体をささえ、事なきを得る。
「ありがとうございます、旦那様」
「……」
森での生活に慣れるため、リアムはルーナに付きっきりであった。
歩きなれない土壌で横に付き、歩調を合わせてくれる。
鼻をスンと鳴らし、何度も安全確認をする姿は狼らしさのないやさしさに満ちていた。
尻尾が揺れる後ろ姿を見て、ルーナはほんの少し切ない気持ちになる。
リアムはやさしく、献身的で、たくましさもある。
人間を模した姿は涼やかに美しく、狼の姿は凛としてカッコいい。
だがリアムはルーナに必要以上に近寄らない。
艶やかな毛並みを見て手を伸ばすと素早く避けられてしまう。
(私って、そんなに魅力がないかしら……)