フェンリルに捧ぐ愛の契り 〜旦那さまを溺愛してもいいのは私だけです! 耳を食みたいのです!〜
「少しだけ……」
銀色に輝くリアムを見て妙に泣きたい気持ちになり、笑って誤魔化そうとする。
「旦那様はお休みにならないのですか?」
声をはると静かな森で音が空気を震わせた。
「今晩は月明かりが強いからな」
「……旦那様は月明かりの下でも美しいですね」
その言葉にリアムは耳を震わせる。
顔をあげ、鋭い眼差しでルーナを見た。
「人里は恋しくならないか?」
「えっ?」
「狼との結婚だなんて嫌だったろうに。……すまなかったな」
「いいえ……いいえっ!!」
あまりに悲しい発言だった。
焦燥感に駆られ、ルーナは窓枠に身を乗り出していた。
「あっーー!?」
乾燥で手が滑り、ルーナの身体が窓枠を乗り越えてしまう。
「ルーナッ!!」
白いシフォンのワンピースをまとったルーナの身体が落下するも、危機一髪でリアムが身体を滑り込ませて受け止める。
広い背中で受け止めたからよいものの、直撃していれば大怪我をしていただろう。
危なっかしいルーナにリアムは怒って吠える。
「気をつけろ! その身体はとても脆いのだから!!」
「……旦那様のせいです」
「はっ……?」
「全部旦那様のせいですっ!!」
呼吸を乱しながらルーナはリアムの背中にしがみつく。
驚いたリアムは尻尾を真っ直ぐに伸ばし、ゴロゴロと唸りながら牙をむいた。