フェンリルに捧ぐ愛の契り 〜旦那さまを溺愛してもいいのは私だけです! 耳を食みたいのです!〜
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「わああ、高いですね!」
巨大な狼の姿になったリアムの背にまたがり、森を駆け抜ける。
寒冷期に入る前の涼しい空気が頬を滑って心地よい。
ルーナはリアムに対し、甘くべったりだ。
狼、人、どちらも愛おしく想いメロメロと言った状態だ。
そのうえで好奇心はおさえられない。
リアムの美しい狼姿にまたがって走りたいとルーナの欲望をぶつける。
キラキラ見つめてくるルーナに根負けし、リアムは肩を落として了承した。
あまり晴れることのないアイスノ王国は白っぽい空のことが多い。
寒冷期に入ってしまえばどんよりとした空模様になってしまうので、この時期に外を謳歌するのがルーナの楽しみだった。
「あら?」
下を見ると人里があることに気づく。
空から見下ろしているとやけに人が小さく見えた。
「あんなに近くに人里があったのですね」
「あぁ、あれは小人族の村だ」
「まああ! ではあの村は国の宝ですね!」
作物の育たない地だからこそ、技術力を高めて国を強化してきた。
鉱石の加工能力、暮らしに根付いた便利な発明。
他国で群を抜く技術力を持っていたが、その力は小人族によってもたらされたと言っても過言ではない。
城下町にも小人はいたが、人の多いところを好まず辺境地に拠点の構えている。
資源の豊富な森の近くに小人族が住む。
働き者の小人族は空から見下ろしてもわかるほどに忙しく動いていた。