フェンリルに捧ぐ愛の契り 〜旦那さまを溺愛してもいいのは私だけです! 耳を食みたいのです!〜
「私、あまり小人族とはほとんど関わったことがございませんの」
「王都には少ないだろうな」
「城にも技術者として小人はおりましたが、なにせ寡黙な方で喋ってくれませんの」
不満げに唇をとがらせ、鼻でため息を吐く。
が、すぐに口角をあげ頬を染めて柔和に微笑んだ。
「ですがとっても優しい方でした。このブーツ、小人族の方がくださったんです」
リアムに嫁入りするとなり、その準備に追われた日々のこと。
城に常駐する小人がルーナのために皮で出来た上等なブーツをプレゼントした。
雪の積もった森でも歩きやすいようにと、機能性に特化した作りだった。
ほとんど口を聞いてはくれなかったが、ルーナを邪険に扱うことはなかった。
不器用なやさしさにルーナは嬉しくなり、狼に嫁ごうとする気持ちを足元から支えてくれた。
「元気にしていらっしゃいますかね……」
小人族は見た目に反して長生きで力も強い。
温厚な性格のものが多く、人と共存して生きる類まれな異種族であった。
「……お前は愛されて育ったんだな」
「旦那様?」
「いや……」
なんでもない、とリアムはそれ以上何も言わなかった。
小人族の村の上空を飛ぶと、巨大な狼の影が村を覆っていた。