フェンリルに捧ぐ愛の契り 〜旦那さまを溺愛してもいいのは私だけです! 耳を食みたいのです!〜
第6話「フェンリルという魔獣の烙印」
その日はどんよりとした曇り空で、森の木々はより鬱蒼としていた。

足場の安定したふもとをリアムとともに薪となる枝を拾って歩く。

巨大な体格に対し、すらっとした四つ足は白く美しい。

付け根の部分のふくらみは手を伸ばしたくなるほどで、時々欲望を抑えきれずに指で突いてしまう。

最初はおとなしく触れさせてくれたが、やはり嫌な箇所だったようで、リアムは顔を埋めようとするルーナを尻尾で叩くようになっていた。

(本当に、狼の姿の雄々しくて美しいこと……)

人の形を取るときも神々しくて美しいが、狼姿もすばらしいと鼻息を荒くした。

「……ルーナ、薪は置いて。背中に乗れ」

「旦那様?」

左右の異なる色をもつ目を細め、リアムは牙をむき出しにする。

空気を震わせるほどに警戒心をむき出しにするリアムをみて、ルーナは慌ててリアムの尻尾を掴みよじ登った。

(なに?)

森がざわついている。

草木を踏み分ける音が四方八方で鳴っていた。

奇妙な空気にルーナは唾を飲み込み、無意識に呼吸を止めていた。

「ーールーナッ!!」

「えっ?」
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