フェンリルに捧ぐ愛の契り 〜旦那さまを溺愛してもいいのは私だけです! 耳を食みたいのです!〜
それは一瞬のことだった。
蛍光色に輝く金の紐が全方向から飛んできて、勢いをつけてリアムに襲いかかる。
はじめからリアムを捕縛するために動く紐に、俊敏な動きをもつリアムも避けきれない。
きつく身体を縛り上げる紐にリアムは苦痛に叫ぶ。
身をよじって暴れ出したリアムの背にまたがっていたルーナはバランスを崩し、宙へと投げ出される。
「きゃあああああっ!?」
状況を把握できないままに身を小さくし、固く目を閉じた。
地面に叩きつけられる際に強烈な痛みが走る……と思われたが、怯えるほど痛くはなかった。
目を開くと鎧をまとった騎士に抱き留められており、衝撃が和らいでいた。
「よくご無事で、ルーナ様」
「……なに、いったいこれは」
「ぐあああああっ!!」
「旦那様!?」
リアムの叫びにルーナは騎士の肩を押して飛び降りる。
粘着質の液体がリアムの口から飛び、肉に食い込もうとする紐には鮮やかな血がにじんでいた。
苦しむリアムの姿にルーナは焦燥感に駆けだそうとする。
だが肩を掴まれ、すぐに手首を縛られ後ろへと引きずられていく。
わけもわからないまま騎士に馬車の中へと押し込まれ、ルーナは足元をふらつかせて椅子に倒れ込んだ。
「なんなの? 旦那様は……」
「久しいな、ルーナ」
「父上!?」