フェンリルに捧ぐ愛の契り 〜旦那さまを溺愛してもいいのは私だけです! 耳を食みたいのです!〜

「なにが目的かはわからぬが、あれは怪物。危険因子だ」

「理由も知らず、約束を反故にすると?」

「お前の安全のためだ。……怪物の嫁など、ありえてはならないのだ」

そう言って父王はルーナから目をそらし、横を通り過ぎていく。

「卑怯者……父上は卑怯者ですわっ!!」

「お姉さま……」

「旦那様……旦那様に会いたいっ……」

膝から崩れ、さめざめと泣く。

伝承では巨大な狼は破滅を呼ぶ怪物として扱われる。

だが実際のリアムはやさしく、穏やかな性格をしていた。

人の世にも興味があり、進化し続ける文化を取り入れる積極性もある。

時折見せる切ない横顔に手を伸ばしたかった。

狼は孤高の生き物。

いや、リアムは孤高ではなく、孤独に生きていた。

ただ温もりを求めているだけであり、そこに種族の差は何一つなかった。

宝物のように接してくれたリアムに対しこれは裏切りだ。

リアムの中で人への信頼が落ちたと理解し、ルーナは悲しみに暮れるのだった。
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