フェンリルに捧ぐ愛の契り 〜旦那さまを溺愛してもいいのは私だけです! 耳を食みたいのです!〜
欲望をむき出しにするルーナにシルヴィアは満足そうに息をつく。
そしてボストンバッグの中から濃いグレーのローブと黒い皮のブーツを取り出し、ルーナに手渡した。
「城の小人から。わたくしに運ばせるなんて図々しい小人ですこと!」
それはルーナがよく声をかけていた小人からの贈り物だった。
森で暮らすために、防寒力と機能性を高めたルーナのために作られたもの。
それを受け取り、ルーナは喜びにあふれ出す涙を拭ってそれを身にまとった。
「ありがとう、シルヴィア。私、行くわ」
「……たまには城へ遊びに来てくださいね」
目元を真っ赤にして泣き出しそうなシルヴィア。
それはまだまだ姉に甘えていたい十歳になったばかりの幼い女の子であった。
シルヴィアを抱きしめ、離れるとルーナはシーツをバルコニーの柵に縛り付け、地面に降りるための動線を作る。
見張りがいないことを確認して、ルーナはシルヴィアに礼を言って外へと飛び出していった。