フェンリルに捧ぐ愛の契り 〜旦那さまを溺愛してもいいのは私だけです! 耳を食みたいのです!〜

「はっ?」

「体格差や常識が異なると思っておりましたが、心配する必要はございませんでしたね!」

「ちょっ!?」

「狼の姿も人の姿も、どちらも素敵ですわ」

毛並みは少し固めだが、しっぽは比較的やわらかいようで握ると口角が緩みだす。

病みつきになる感触に興奮するばかり。

耳はどんな弾力があるだろう。

爆発した好奇心で頭の耳に触れようと手を伸ばすが、身長差があり届かない。

肌をぴったりとつけるほどに密着していたが、ルーナの欲望はとまらなかった。

「お主は変態か!?」

「はい! 旦那様のような方と結ばれること、ずっと夢見ておりました!」

アイスノ王国は寒冷地であり、一年の半分は雪に覆われている。

今は温かい時期とはいえ、コートやローブなしでは寒さに震えてしまう。

鉱物資源が豊かではあるが、農作物はあまり育たない貧弱な国だ。

そんな国の王女として生まれた以上、隣国との政略結婚は避けられない。

淑女として慎ましく、品よく貞操観念をしっかりと持つことを意識してこれまで生きてきた。

しがらみに縛られることなく生きる動物のような生き方にひどく憧れた。

「……旦那様は私の憧れです」

「憧れ、か……」

ふわりと頭頂部を撫でられる。

遠慮のない手つきはわしゃわしゃと動き、一つの三つ編みにくくったルーナの髪を乱していた。

「もうっ……旦那様。ぐしゃぐしゃになってしまいますわ」

義務的に身だしなみを整えてきたが、好ましく思ってほしいという欲になったのははじめてであった。
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