結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「顔色が悪いです。無理せず。辛かったら目を閉じていいですよ」
低い声でゆっくり優しく言われて、張り詰めていた糸が緩むように頭痛が少し楽になる。
その彼が不意に、私ではなく真臣と武内さんの方に顔を向けた。釣られて私もそちらを見ると、もう一人、同じくスーツを着た男性が、私と彼らを遮るように立っていた。その人は二人に向かって怒ったように言い放った。
「さっきから聞こえてたけど、アンタら自分勝手すぎるだろ。だいたい、往来でする話じゃないよ」
その立ちはだかっていた男性が私の方を振り返って、「大丈夫? ……じゃないよな」と言ったが、それはそれは目の覚めるような美形だった。染めているのか自毛なのか、栗色の髪にアーモンド型の綺麗な目、日本人離れした彫りの深い顔立ちはモデルだと言われても納得する。
見れば、武内さんまで目を輝かせて高揚した顔をしている。
量販店ではなくオーダーメイドで仕立てたと思われる上質なスーツ。身のこなしもスマートで、こんな状況じゃなかったら、おそらく目の保養にと三度見くらいしたであろう。