結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
彼らは仙台からの出張帰りで、直帰予定だから「帰宅前に軽く飲んで帰ろう」と話していたら、この騒ぎに遭遇したらしい。
「二対一だったし、向こうが一方的な主張ばっかりだったからね。失礼だとは思ったけど割り込んじゃったよ。勝手にごめんね」
「お騒がせして申し訳ありません。……正直、助かりました。ありがとうございます」
「災難だったねえ」
災難か、そうかもしれない。
私が何度も頭を下げていると、可愛らしいリズムの電子音が聞こえてきた。日曜朝のアニメの主題歌だ。見ればイケメンのお兄さんがスーツの胸ポケットから携帯電話を取り出していた。画面を見た彼が言った。
「ああ、ごめん。娘が夕飯食べずに待ってるって。飯でも奢りたかったけど、オレ帰るわ。ほんとごめんね」
「とんでもないです。私なんかより、娘さんのために帰ってください」
彼はすっかりパパの顔になっている。日曜日にはバレエの発表会もあるらしく、可愛いでしょと写真を見せられた。幸せそうな家族写真に、今は少し胸が苦しくなる。
急いで帰る彼を見送ったあと、私をそっと支え続けてくれていたおじさんにもお礼を言った。
みんな無視して通り過ぎていた中で、この人達だけが手を差し伸べてくれた。