結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
新宿駅_2
急に新宿駅の説明を受けて、少し混乱していた私は(このおじさん、落ち着いて品のある美声だなあ)と関係ないことを考えていた。
JR新宿駅はとても広く、普段使わない方向にホームを歩いていくと、まるで知らない駅にいるみたいだった。
立ち止まって深呼吸してから、おじさんを見上げた。心配そうな表情だが、彼は黙ったままだったので、恐る恐る口を開いた。
「あのう、私が自殺しようとしている……と思いました?」
「思いました」
おじさんは力強くうなずき、一向に手を離そうとする様子はない。明らかに警戒されている。
「違います。考え事していただけです。現状で一番の問題が住む場所なので、そのことについて考えていました」
私がはっきりそう告げると、おじさんはきょとんとした顔で沈黙した。私のような小娘から見ると、この人はとても大人で、あまり表情を変えないと思っていたから、ちょっと可愛いと思ってしまった。
思い違いに気づいたのか、彼は謝りながら慌てて私の腕を離した。
「ああ……すみませんでした。早とちりしました。あなたが線路をじっと見つめているところに遭遇したので、てっきり……」
さっき目の当たりにして事情を知っている人だから、暗い顔してホームに立っている私を見て、誤解したのも無理はない。それに、引き留めようとしてくれた事実は、正直ちょっと嬉しかった。さっきまで私はひとりぼっちだと思っていたから。