結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
条件付き格安物件_1
新宿駅東南口には商業施設やお笑い専門の劇場などがあり、金曜の夜は普段よりもさらに人が多くて賑やかだった。
新宿御苑の方向へ歩きながら、私は八木沢さんに質問した。
「統計局って何をするんですか? 国勢調査?」
「国勢調査も仕事のひとつですが……僕の仕事は、おそらく戸樫さんが想像しているよりも技術系です」
政策の指針となるデータを取り扱うのが統計局で、八木沢さんはその統計を正確にするための基礎研究もしているらしい。
国の行政制度の管理運営云々と簡単な説明を聞いたが、私にはよくわからなかった。わからないなりに、このおじさんは数字が好きなんだなというのは理解した。休日も論文を読んだりして過ごしているそうだ。頭良さそう(頭の悪い感想)。
お店は満席だったが、少し待てば席が空くとのことだったので外で待つことになった。
店員さんも気軽に対応していたので、どうやら八木沢さんは常連客のようだ。九時の予約客が来るまでの短時間になるが特別に入れてもらえるそうで、あまり長居は出来ない。でも今夜はお酒を飲むつもりもないし、食事も少量でいいので、むしろ私には好都合だった。
案内されたのはカウンター席で、私は壁際に座らせてもらい、八木沢さんがその隣に座る。……さっきまで名前も知らない人だったのに。なんか不思議。