結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「戸樫さんなら、またきっといい人に巡り会えますよ。もう出会ってるかもしれない」
「そうですね。でも、もう結婚はいいです。考えたくないです」
私がそう言うと、八木沢さんが楽しそうに笑った。
「では仲間ですねえ。僕も結婚したくないんです」
「仲間ですね!」
「この歳になると、親兄弟や上司がうるさくて。結婚しないと一人前じゃないなんて誰が言い出したんだろう」
「私は親がいないからうるさく言われません! やった!」
ある国では、結婚は通過儀礼。私もなにも疑うことなく恋愛の延長で結婚しようと思っていたけれど、そもそも結婚って何だろう。誰かと共存できなくても、一人で楽しく生きて幸せならいいじゃないか。
八木沢さんと二人で独身の楽なところを言い合って、最終的に家の話になった。
「会社が日本橋なので、通勤に便利そうなところで探します。猶予がないので、あまり選べないとは思いますが、頑張って探します」
「……僕の」
「え?」
急に八木沢さんの動きが止まったから思わず注視した。八木沢さんは真剣な口調で言った。
「僕の家、一部屋空いてるんで、そこに住みませんか?」
「はい?」
ルームシェアってこと?
どれだけ広い家なのか知らないが、独身男性と同居とかありえない。
「無理、無理です。いくら彼氏と別れたばかりだからってそんな非常識な……」
「家賃は考慮します。あなたにお手伝いをお願いしたいこともあるので」
「お手伝い……?」
まさか、まさか、×××込みの家政婦になるとか、そういうえっちなやつ!?
無理ー! 無理むり! いい人だと思っていたらとんでもない人だった!
……と思って一度は断ったが、それは盛大な誤解だったとすぐに知ることになる。