結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 角を曲がると、ホールよりも少し天井が低くなっており、そこに狭い通路が伸びていた。通路の先には鉄の扉があり、お兄さんから「扉の向こうは駐輪場です。内側からは押せば開きますが、外側からはカードキーがないと入れません。こちらもオートロックなので閉め出されないようにしてくださいね」と注意された。


 その鉄扉の手前に、ひっそりと101号室がある。それまで説明はお兄さんに任せて黙っていた八木沢さんが口を開いた。

「日当たりはよくないので、その点だけご了承ください。窓はありますが、ベランダなどもないです。その代わり浴室乾燥があります」
「女の一人暮らしなので、どうせ洗濯物は外には干しません。むしろありがたいです」


 管理会社のお兄さんが扉を開くと、まだ午前中なのに本当にその部屋は真っ暗だった。どうして、前もって八木沢さんが「日当たりがよくない」と言ったのかがよくわかった。

 照明をつけると、なにもない広い玄関の先によく磨かれた綺麗な廊下が見える。勿論、人が生活している気配はまったくない。けれど、空き部屋特有の匂いもない。

 廊下を進みリビングに入る。事前に聞いてはいたがその荷物の多さに驚いた。2LDKの全部の部屋を見せてもらったが、窓のある部屋以外にたくさんの荷物――これから私が管理する骨董品――が無造作に置いてある。


< 26 / 176 >

この作品をシェア

pagetop