結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「もともとここは祖父が所有していたマンションです。この骨董品ごと相続で譲り受けました。骨董品は祖父が生前、趣味で集めていて、その一部をここでずっと保管しています。もう十三回忌も終わったので、そろそろ本格的に整理しようと思っていたんです」
短く説明されたが、駅から徒歩三分の好立地マンションを所有しているってどういうことだ。
ここにある古美術品も一体どれくらいの価値があるのか、私には想像もつかない。よく見ると、掛け軸や陶器、刀剣や甲冑まである。大きな彫刻などは床や棚に置いてあり、箱のまま置かれているものもある。
「これだけあったら風を通すのも大変ですね」
「そうなんです。だから、これらの骨董品のメンテナンスと整理を手伝ってください。最終的な買い取りなどは専門家に任せますが、そのやり取りもして欲しいです。置いてある家具家電は、好きに使って頂いて構いません。勿論水回りも。実際ご覧になっていかがですか?」
紫外線による劣化をさけて、窓のある部屋にはなにも置いていない。だから、そこを私の居住空間にしていいそうだ。必要最低限な家具家電付き。好条件過ぎる。
「僕の家に一部屋空いている」とはそういう意味だった。決してルームシェアではない。101号室が空いていた。そして、同居するのは骨董品。
2LDKのうち、実質使えるのは一部屋だが、1Kだと仮定しても、提示された家賃は相場に比べるとかなり破格だった。