結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 結局、真臣は帰ってこなかったので、日曜日はずっと荷作りをした。家具は置いていくし、そんなに荷物もないので、これでいつでも引っ越しが出来る。
 仕事もあるので、最短である今週の土曜日にトラックの手配をした。


 月曜日。
 金曜の夕刻に時間休を申し出たから、いつもより早めに家を出た。作業があればやっておきたいし、なにより真臣よりも早く出勤したかった。普段、真臣は定刻(コアタイム)にならないと出勤しない。

 でも、先回りしたかったのか、珍しく真臣が先にオフィスにいた。正直、もう顔を見るのも嫌だが仕事場ではこれまで通りの態度でいようと思い、私から「おはよう」と挨拶をした。
 それを許しだと誤解したのだろう。彼は笑って、デスクから立ち上がり私の方へと歩いてくる。

「おはよう。今日は練馬の実家から出勤したから早起きして眠いよ。……七瀬さんは昨日の夜、福岡に帰ったから安心して」

 何が安心なのかわからないので返事をしなかった。意味がわからない。
 早く会話を切り上げたいと思っていたら、真臣は朗らかに笑って言った。

「火曜から出張で、新潟に一泊だから。荷物の準備しといてね!」


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