結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「浮気するつもりなんか全然なかったんだよ。和咲が一番好きだ。ただ、七瀬さんは福岡支店にいるとき、ずっと良くしてもらってて……『最後に思い出をください。それで諦めます』って言われて……」
「結局、妊娠は事実なの?」
「病院に行ってから東京に来たみたいで、エコー写真? みたいなやつも見た」
きっと、武内さんは真臣のことをずっと好きだったんだろう。もうどうしようもない。
仮に真臣が私を一番好きだと言ってくれても、いまの私には、もう応える気持ちはない。また頭痛がする。早く違約金の話をしてしまおうと思っていたのに、彼が信じられないことを言い出した。
「でも、生まれるかどうかわからないだろ?」
「最低! どうしてそんな酷いこと言うの!?」
「え、だって、実家に連れて帰って事情を話したら、母さんが『妊娠初期は流産しやすいから、大事にしないと』ってすげえ過保護にちやほやしてたから。つまりダメになる可能性もあるんだろ?」
命をなんだと思ってるんだろう。こんな人だったんだ。
ただ、武内さんが義母から大事にされていたようで、そこは少しほっとした。そして同時に、もう私は完全に邪魔者なのだなと悟った。それなのに真臣だけが現実を受け入れようとしていない。