結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「急に子供って言われても、ホント困るし……」
「だったらどうして避妊すらしなかったの!」
「……もう部屋になにもなかったんだよ。ゴムもどこにあるかわからなくて。安全日? とかそういうので、大丈夫って言われたから」
「それを信じたんだ……」
浮気しました、ナマでヤりました、なんて聞きたくなかった。嫌悪感しかない。こんな会話したくない。また吐きそう。
「もう無理……。これ以上話したくない……私と別れて、彼女を大事にして」
「僕は和咲が好きだ。別れたくない。……和咲は、僕が嫌いになった?」
「…………ごめんね、大嫌いになった」
怒ったのか悲しんだのか、それから彼は一言も口をきかなくなった。きっと私を冷たいと思っただろうが、もうどうでもよかった。
結婚式場のキャンセル料は真臣が全額負担すること。マンションの違約金は私が負担すること。準備していた婚約指輪や結婚指輪、二人で買った家具家電もいらないこと。それぞれの上司には、個別に報告することなど、私が細々したことを話し終えると、彼は「わかった」とだけ返事をして、食事もせず寝室に引きこもってしまった。
二人の寝室なのに、あなたがいたら私が寝られないじゃない! と怒鳴ろうかと思ったが、もう元気が出なかった。