結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

「土曜日に契約しておいてよかったです。落ち着かないと思いますが、休んでくださいね」
「ありがとうございます」

 荷物を抱えたままだし疲れているし、とりあえずお礼を言って鍵を受け取り、部屋へ入ることにした。

 八木沢さんの実家は鎌倉にあるそうで、ずっと本宅に住んでいたおじい様がここで暮らすことはなかったが、蒐集した美術品を眺めに、この部屋に来ていたそうだ。最低限の家電が揃っているのはそのためで、少々型は古いがテレビもあるし、エアコンも冷蔵庫もある。


 部屋についたらどっと疲れが出た。
 電気は通っているが、当たり前だが冷蔵庫は空っぽ。疲れ果てていたからこのまま眠ろうかと思ったが、ファブリック関係のものがない。ベッドにはマットレスのみが置いてあったので、そこにバスタオルを敷いて寝転がることにした。

 ローテーブルに置きっぱなしだったスマホが光っていたが、いまは見たくない。ずっと、真臣からのメッセージが届いている。


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