結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
不夜城新宿_3
どうせ眠れないだろうし、何か食べ物を買いに行こうかな。
都心部なのでお店はたくさんある。コンビニも徒歩圏内に数軒ある。
知らない街だから心細いな、と思いつつエントランスへ向かうと、なぜか八木沢さんが立っていた。
「八木沢さんもお出かけですか?」
「あの……寝具がないのではと心配になって」
「わ、私のために? ありがとうございます。でも大丈夫です。確かにないですけど、なんとかなります。布団のないところで寝るのも慣れてますし!」
「……そうですか?」
「私、ずっと祖母の介護もしてたんですが、何度も呼び出される夜は、祖母の部屋で床に転がって寝てたんですよ」
私が笑って話すと、八木沢さんが困った顔して、「じゃあ、なおさら」と言って、客用の寝具を持って降りてきてくれた。
エレベーター前で受け取ろうとしたら、「重たいから部屋まで運びます」と言われてお言葉に甘えた。
「ちゃんとクリーニングに出してますからね」
「わかります、サラサラですもん」
マットレスだけでも十分だったけど、寝具があるのは素直に嬉しい。喜んでいると、なぜか八木沢さんはますます心配そうな顔になる。
「他に足りない物はないですか?」
「十分です。あ、朝ご飯がないですね。近くにコンビニありますよね。行ってきます」
「こんな遅い時間に! 若い娘さんが一人歩きしてはだめです。一緒に行きましょう」
「いえー、もう迷惑かけっぱなしなので……」
そう断ったのに、八木沢さんは先に玄関まで行き、手を上下にパタパタさせて私を呼ぶ。
か、可愛いな……このおじさん……。