結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「あっぶなかったぁ……轢かれるところでした! ありがとうございます、全然見てませんでした」
「いえ、死角でしたから仕方ないです。夜は乱暴な運転の車も増えます。たまにパトカーとカーチェイスしてますから、気をつけてくださいね」
「わあ、警察24時って感じですね……あれ?」
「どうしました?」
この前のように体を寄せているけど、今日は具合悪くもないので、とあることに気づいた。
「八木沢さん、体固い!」
「……え? 固い?」
「八木沢さんって力強いですよね」
「ああ、すみません。痛かったですか?」
ぱっと離されてちょっと寂しい。見上げたら困った顔をしていたので、改めてお礼を言ってから感想を伝えた。
「勝手なイメージで、公務員の方って細いのかなーと思っていたので、結構がっちり!」
「ああ、そういう……国家公務員は割と激務なので、メンタルもフィジカルも強いほうだと思いますよ」
「体力ないとやっていけないんですね、大変」
中央省庁の一部は、とんでもない仕事量なのだとニュースで取り上げているのを見たことがある。国会期間中は帰れないのが当たり前だとか。色々大変そう。
「それなのに私が、なにかと迷惑をかけている! すみません、あとは走って自分で帰ります!」
「戸樫さんだけ走って帰っても、帰る所は一緒なので、僕は置いてけぼりなのですが」
「……そうですね……ばかだ私……」
楽しそうに笑う彼に、「転ばないように、ゆっくり歩いて帰りましょう」と言われて、それがなんだか嬉しかった。