結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
恋愛の終止符_2
土曜日。
荷物が少ないので、搬出作業は笑えるくらいに一瞬だった。立ちあいがあっさり終わったので、真臣と言葉を交すこともなかった。
だが、挨拶をして家を出ようとすると真臣に引き留められた。「触らないで」と強く拒否したが、痛いくらいに腕を掴まれて、恐怖で身動きできなかった。
「待って、和咲。これだけは言わせてくれ。一番好きなのは和咲だ。やり直せるなら、やり直したい」
涙混じりの震える声で訴えられて、ほんの少し心が揺らいだことに自分自身が驚いた。やり直す方法があるなら私だって知りたい。
「これからもずっと好きだ」
だったらどうして浮気なんかしたの!
そう泣き叫びたかったが、どうして、と繰り返しても時間は戻らない。何も変わらないなら、黙って受け入れるほうがいい。
「……ありがとう。私も好きだったよ。私の初めての恋人だったし、ずっと一緒にいるのかなって夢も見た。でも、もう無理だから。お世話になりました、さようなら」
泣きたくない。頭が痛い。振り払っても、また腕を掴もうとしてきたので、全力で押し返して逃げるようにマンションを出た。駅まで走って、ちょうど入線してきた快速電車に乗る。真臣はずるい。ずるい、大嫌い。大好きだった。ずるい。