結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
荷物を積んだトラックは、先にマンション前に着いていた。急いで部屋に入り、重たい遮光カーテンを開き、「貴重品が多くあるので、指定された場所以外には絶対に荷物を置かないで欲しい」と伝えた。作業員のお兄さん二人は慣れた様子で手際よく作業して、荷入れもあっという間に終わってしまった。
終わってしまえばあっけない。
あんなに悩んで苦しんでも、終わるときはあっさり終わる。拍子抜けしそうなくらい簡単に。
洋室に整然と並んだ段ボールと少しの家具。私に残されたものはたったそれだけ。指輪もドレスもない。それを見ていると力が抜けて涙がこぼれてきた。
私の人生って、どうしてうまくいかないんだろう。
開け放した窓から、私がぼんやりと立っているリビングを通って、玄関へと風が吹き抜けていく。
ああ、業者さんが出て行ったのに、廊下の扉も玄関扉も開けっぱなしだ。ダブルオートロックとはいえ、侵入する方法はあるだろう。同じマンションの人が全員善人ではないだろうし、泥棒が入らないように閉めなくちゃ。管理も私のお仕事なのだから。
廊下から物音がしたので顔を上げて振り返ったら、八木沢さんが驚いた表情で立っていた。髪も無造作だし、スーツではなく普段着のシャツとスラックスだから、一瞬誰かわからなかった。
「トラックが出て行ったので、様子を……見にきたんです……が……」
「ありがとうございます。搬入も無事終わりました」
「……なにかトラブルでも?」