結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
恋愛の終止符_3
日曜日。
今日は午後から槙木家による家族総出の引越祝いと聞いていたが、この小さな部屋には入りきれないと思う。小学生のお子さんがいるのに、大丈夫なのかと心配していたら、当たり前のように十五階に呼ばれた。
エレベーターを降りると、そこは白くて広いホールだった。
明るくてびっくりしたから見上げると、空が見えた。天井の一部がガラス張りになっている。意味がわからない。
玄関までの道のりに観葉植物がたくさん置いてあり、植物園の温室のようだ。
掃除の行き届いた綺麗な玄関に「ここで十分生活できるな」と思考が停止しそうになっていた。
広すぎるリビングの中心には、「これどうやって運んだの?」と言いたくなる重厚な木製のテーブルと革のソファーが置いてある。設えてある調度品は、明らかに私の持ち物とは違う。
薄々感じてはいたけれど、八木沢さんは本当に「雲上人」なのでは……?
ダイニングテーブルには、槙木さんの奥様が準備してくださったというお菓子やおつまみが並んでいた。奥様から「どのワインが好き?」と聞かれたが全くわからないのでお任せした。そもそもワインの違いなど、私には色しか分からない。
無礼を働いてはいけないので、なるべく部屋の隅にいよう……と震えていると、小学生くらいの女の子に手を引かれた。
「こんにちは、あなたがパパの新しいお友達?」
か、可愛い……! 写真で見た以上に可愛い!
二重のぱっちりした目は、お父さん譲りだ。