結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「もう一緒に住んでるんだね。全然知らなかったよ」
「ねえ、これいいの? 和咲さんがマンションの違約金を払ったんじゃなかった?」
引越後、現金を封筒に入れて真臣に手渡していた。そのことは、特に仲の良かった永遠子には話していた。
「解約してないってことは、その違約金の十五万円はどこにいったの?」
「あーっ!」
永遠子に指摘されるまで、全然気づかなかったので、思わず大声を出してしまった。
式場のキャンセルをしなかったのなら、キャンセル料は発生していないだろう。
そして、マンションの解約をしていないなら、違約金も発生していないだろう。
「慰謝料もらってもいいくらいなのに、和咲さんだけお金払ってるのっておかしくない? 解約しなかったのなら、返してもらうべきじゃない?」
「……面倒くさい、もう関わりたくないよー」
永遠子は「私は行かない、欠席で返事する」と怒り、「絶対取り返したほうがいいし、なんなら自分が柴田に言う」と息巻いていた。
この招待状が、永遠子以外の同期や同僚にも届いたことで、私との婚約破棄が、私のせいではなく真臣の浮気が原因だと知れ渡ることになる。
また騒がしくなる気がする。もう悩みたくない、本当に面倒。
永遠子が言うように私だけがお金を払っていることに納得できない気持ちも勿論あるが、正直なところ放っておきたい。