結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

大家と店子、だったはず_3


 廊下の床にまで散らばった手紙を慌てて拾い集めて立ち上がると、八木沢さんが何か言いたげな表情になっていたので申し訳ない気持ちになった。また心配かけてしまったかも。

「新しい住所がわからないから、わざと前の住所宛にしたんだと思います。郵便局に転居届は出していたので、全部転送されてきたみたいです」
「どんな内容だったんですか?」
「……好きだ愛してる、って内容で……ラブレター、みたいな……」
「ラブ……?」

 八木沢さんの口から「ラブ」なんて単語が出てくると思わなかったので、おかしくて笑ってしまった。だが、笑っている場合じゃない。

「やりなおしたいそうです」
「戸樫さんは復縁したくないんですか?」
「復縁ですか? 嫌ですよ、こんな身勝手な人。それに一人暮らしが楽しくなってきたところなので、もう結婚とか考えたくないです」

 この手紙をどうしようか判断に迷って玄関に置いていたが、思い切って捨ててしまおう。他人に振り回されて苦しい思いをしたくない。忘れて再出発するためにもすぐに家を出たのだし。


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