結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
そうはいっても、その八木沢さんの車も内装が豪華で気後れしそうになり、「お、お邪魔します!」と挨拶してから乗り込んだ。革のシートはふかふかで、発進しても走りが滑らかで振動が少なく、乗り心地がとても良い。
「すごーい! 長時間運転しても疲れなさそうですね! ……あ、すみません。うるさくて……」
「戸樫さんが楽しそうだと僕も楽しいです」
「笑って過ごせるのは、八木沢さんや槙木さんのおかげです」
「……疲れているのに引越祝いで騒いで、余計なことをしたのでは、と心配してましたが良かったです」
「ありがとうございます。とっても楽しかったし、嬉しかったですよ!」
両親も祖父母もいなくなってから、私はずっと一人だったから。一人で立つしかなかったから。見守ってくれる誰かがいるのは、私にはとても嬉しいことだった。
短い会話をしているうちに、もう店に着いてしまった。徒歩十五分の距離は車で五分足らず。
「あっという間にドライブ終わっちゃいましたね」
「これから郊外店まで行ってもいいですよ?」
それじゃまるでデートみたいだ。そう思うと、急に隣にいるのが恥ずかしくなってきた。車からおりたあと、八木沢さんの少し後ろを歩いていたら、「早かったですか?」と歩みを緩めてくれたので、妙なことを意識しているのは私だけだ、とますます恥ずかしくなった。私のばか!