結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 開店直後だったので、店内はそれほど混んでいなかった。都心部の店舗だが売り場も広く品数も割と多い。同じフロアにいた新婚らしき若い男女を見て、真臣と同棲する前に、二人でここに来たことを思い出して嫌な気持ちになった。
 あのときは真臣の好みを優先したけれど、今回は私の好きな物を選ぶことができる。

 そう思ってたくさん見ているうちに、あれもこれも可愛くて迷ってしまった。
 大柄の葉模様も可愛いし、淡い柄のカーテンも部屋に合いそう。

「お値段も手頃だし、迷います」
「時間はあるので、ゆっくり選んでください」

 でも、貴重な休みの日に、特に急ぎでもない買い物に付き合わせていることが申し訳ない。さんざん迷ったあげく、白が基調の植物(グリーン)とミモザの淡い柄のカーテンに決めた。
 私が「これにします!」と指さして振り返ると、八木沢さんが少し驚いたような気がした。
 どうしたのかと首を傾げて見上げたら、彼が相好を崩して笑った。その温かい笑い方を見て、つい可愛いと思ってしまった。

「僕もこれがいいなと思ってました」


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