結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
東京駅_4
不意に全てがむなしくなって、泣きたい気持ちになったが、話はまだ終わってないと自分に言い聞かせて言葉を続けた。
「結婚式のスピーチをお願いしていた方々には私から謝ります。それに、真臣のご両親にも謝罪を……」
「待てよ。違うって言ってるだろ! 七瀬さんも可愛いけど、僕は和咲が好きなんだ!」
浮気相手の女の肩を抱いて、私と対峙しながら吐く台詞じゃない。
優柔不断にも程がある。一体、なにが「違う」のかわからない。
実際に妊娠しているのか、そうでないのかは、もうどちらでもいい。別の女と関係を持ち、その人から「妊娠した」と言われたら嘘つき呼ばわりして無視しておいて、あげく連絡しなかったことを私のせいにするような男の、どこを好きになればいいの。
話にならないから無言でいたら、顔をしかめた真臣が言い放った。
「和咲は僕のこと好きじゃなかったのか?」
「どうして……どうしてそう思うの?」
「こんなときも泣かずに冷静で。和咲は冷たいな」
原因は私にあると言わんばかりの言い草に反論したかったが、喉が詰まって言葉がうまく出てこない。鼻の奥が痛い。泣きたくない。こんなやつのために泣きたくない。