止まない雨の降る夜は
一気に冷めた。別にいつ出てこうと知ったことじゃない。・・・バカかオレは。

玄関先に目をやるとミュールが脇によけてあった。眉をひそめる。さすがに裸足はねーよな。踵を返した。

リビングに戻り、風に緩くなびくシーツが視界をよぎった。窓際に近寄りガラス枠をスライド。外から見えない程度に囲われたベランダの端で、壁を背もたれに丸まった物体。

「何やってんだ、ったく」

呆れより苛立ちのほうが多めだった。思ったより声もでかかった。仕事中の居眠りが見つかったみたいな驚き方で、小夏が膝のうえに乗っけた寝ぼけ顔を上げる。

「カオルちゃん?びっくりしたぁ・・・」

「なんでこんなとこで寝てんのかって訊いてんだよ」

「えーと・・・邪魔しちゃ悪いなぁって思って、そのうち眠くなっちゃってー」

スェットパンツの尻を叩きながら、立ち上がったバカ女がふにゃっと笑ったのを、力任せに捕まえてその口を塞ぐ。

一瞬、小夏は体を強張らせた。衝動。本能。名前が付かない、ただ。今すぐ滅茶苦茶にしてやりたかった。
< 10 / 16 >

この作品をシェア

pagetop