止まない雨の降る夜は
ときどきワイパーで雨を散らしながら、梅雨明けがどうのと金丸が喋ってたのを思い出した。夏はうんざりする。(タトゥー)の入った両腕を晒して歩けねーのが暑苦しい。

オレのそれを見て、印刷したのかと無邪気に感心した女が浮かんだのを頭から追い出した。・・・後腐れない女でも引っかけて適当にヤるか。面倒じゃねーなら誰でもいい。

どこにも寄らずアパートの駐車場に着いた頃には本降りだった。

傘ナシ。住人専用の外門の手前で足が止まる。植え込みを背に地べたに丸まってる物体。ずぶ濡れの物体。

オレは無言で通り過ぎた。門は鍵でしか開かない、部外者は入れない。追ってくるかと思った。来なかった。ほっとけ。あきらめて帰れ。

ドアを閉め、靴を脱ごうと前かがみになった。ふいに、ベランダで丸まってた小夏の笑い顔がよぎった。

名前のつかない衝動。踵を返して玄関を飛び出す。

「・・・ッッ、なにやってんだよ、あんた!!」

二の腕を掴み、怒りにまかせて力いっぱい引っ張り上げた。後先なんか考えもしなかった。そのまま風呂に押し込んでシャワーのコックを全開にする。
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