止まない雨の降る夜は
OLみたいな恰好の小夏は項垂れたまま、温めの湯を浴び続ける。巻き込まれたオレも、ワイシャツとスラックスから雨の雑じった湯が滴る。

「脱げよ」

わざと億劫そうに言った。ただでさえ細い肩が小さく震えた。

「勘違いすんな、しねーよ。オレもさっさとシャワー浴びてーの」

愛想なく言い放った途端。シャツのボタンを外しかけた手を止められた。あんなふにゃふにゃしてたクセに必死に。

「・・・なんだよ」

「・・・・・・カオルちゃんになんで嫌われちゃったのかわかんなくて、・・・ちゃんとわかんないとまた来ちゃうから・・・」

下を向いた小夏がようやく喋った。絞り出すように探すように。

「・・・あのお店で会えて、全然変わってなくて、やっぱり優しくて。・・・好きなんて言えないから、ちょっとでもいいから、・・・体だけでもカオルちゃんといたくて、ごめんね・・・?ストーカーみたいだよね・・・」

途切れ途切れに並んだ単語を飲み込むまで、自分でも呆れるくらい時間がかかった。

「意味わかんね」

腹ん中で思ったはずが口から洩れた。一瞬固まった小夏の指先から力が抜けて、オレにすがってた手がだらりと下がった。
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