止まない雨の降る夜は
「そ・・・だよ、・・・ね」

声を詰まらせ、真っ赤な目でふにゃっと笑ったあんたを。引き寄せて手加減なしに抱き竦める。

「カオルちゃ、・・・くる、し」

「うるせぇバーカ」

思わせぶりな女のフリなんかしてんじゃねーよ、変わってねーのはどっちだよ。誰が嫌ってんだよ、あのまま忘れさせりゃよかったんだよ!

「ほんと面倒くせーな、オレといたけりゃ出てくな、一生カラダで払え。後悔しても遅せーんだよ、死んでも逃がすかよ」

引き留めてんだか脅してんだか。支離滅裂はオレだ、臆病で卑怯なのもオレだ。言わせて全部あんたのせいにする。こんな男に惚れた女のせいにする。

「・・・え、っと、それって・・・」

もぞもぞと埋まってた顔を上げ、じっと見つめる小夏。

「いて、いいの・・・?」

返事の代わりに顎下を捕まえて、ぷっくりした下唇に噛みついてやる。

「カオルちゃんに好きになってもらえるように頑張るね・・・っ」

半泣きでふにゃふにゃ笑った女がまともに可愛く見えた。

・・・ってか『頑張る』じゃねーよ、いいかげん気付け。オレはあんたを。







甲斐さんに冷やかされそうで、女ができた言い訳を考えた。雨のせいにした。止まない雨の晩、寝床を欲しがって鳴く可哀そうな女を拾った。・・・ことにした。

初恋なんていう、ガキの頃のむずがゆい記憶は墓まで持ってく。あの世でもふにゃふにゃ笑って待ってたら、いつか聞かせてやるよ小夏には。




END

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