止まない雨の降る夜は
住んでるアパートは店から車で二十五分ほど。途中、コンビニに寄って明日の朝メシを買う。

夜メシは(まかな)いで間に合うから自炊はしない。ゴミも出ない。地球に優しいのはオレみたいなヤツじゃないかと思う。

去年越してきたアパートは築五年の1LDK。『それなりに上等に生きろ』が甲斐さんのスタンスで、家賃は半分カイシャ持ちだ。・・・これで料理洗濯好きの、手のかからない女でもいりゃな。

しばらく決まった女はいない。店から直帰はたいがい夜中の一時すぎ、甲斐さんに呼ばれれば朝帰りもざら。日曜祝日の休みに野暮用が入らないとも限らない。かまってやる時間もない。

そういや甲斐さんの気に入りはカタギらしい。素人に手は出さないあの人にしちゃ珍しい。

アスファルトで舗装された駐車場に車を滑り込ませ、住人専用の外門を通って、105のプレートが付いた角部屋のドアにカギを差し込む。

三和土(タタキ)に転がってた女物のミュールに一瞥をくれると、冷蔵庫に朝飯を突っ込んでシャワーを浴びた。
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