止まない雨の降る夜は
眠気がまとわりつきながら目が醒める。ブラインドの透き間から白い光が漏れて、隣りに小夏はいない。だるく視線を巡らせた。隅に置かれたキャリーケースが目に入る。無意識に吐いた溜息。

スマホを探そうとしてリビングに置きっぱなしだったのを、ノロノロ起き上がった。

手に取った画面の表示時刻は午前九時四十八分。甲斐さんからの業務連絡はない。なにかを急ぐ予定もない。

風呂にも小夏はいなかった。シャワーを浴び、適当にドライヤーをかけて、裸のままリビングへ戻った。

「あ、おはようカオルちゃん」

ふにゃふにゃ笑う女がテーブルの前に直座り。ブラインドの角度を勝手にいじって部屋が明るい。やけに眩しい。

「ごはん食べる?」

サラダ、プリン、冷やし中華、サンドウィッチ、おにぎり。行って帰って20分ほどのコンビニに出かけてたらしい。

「いらねーよ」

「せっかく買ってきたんだよ~」

パーカーのスェット上下で、髪をふたつ結びにしたパッと見は年齢不詳。・・・オレより五コ上の三十三には見えねーな、ガキ臭くて。
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