止まない雨の降る夜は
小夏は地元にいたころ近所に住んでた女だ。向こうが高校生になってもハタチ過ぎても、顔を合わせればふにゃふにゃ笑って話しかけてきた。不良息子のレッテル貼られたオレを何とも思ってなかった。

高卒でさっさと家を出て親と縁を切ったオレが小夏と再会したのは、一年半ほど前。偶然だった。

CLOAKに来た男女の客。店中に仕掛けた隠しカメラで、半個室の様子をモニターチェックできた。しばらくして女がバッグを手に席を立ち、男が手慣れた仕草でロンググラスに薬を盛った。

オレはバックヤードからホールを抜けて、トイレから出てきた女を捕まえる。緩くウェーブのかかったセミロングの髪を耳にかけ、驚いた顔でオレを見上げた薄化粧。

『・・・あれ?カオル、ちゃん?』

モニター越し、ふにゃふにゃした笑い方に覚えがあった。男はツレなのかと思ったが、案の定ただのクズだった。

『ちゃん、じゃねーよ。何してんだ、あんた』

相手は取引先の担当者、社外ミーティングとやらで上手いこと誘われたらしい。見たまま話してやると、戻った小夏は最後までグラスには手を出さなかった。
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