止まない雨の降る夜は
一週間後、一人で店にやってきた小夏に『お礼がしたい』とせがみ倒された。

『なら体で払えよ』

二度と近寄らねーだろうと思った。

『・・・うん。ギブアンドテイクだもんね』

ふにゃっと笑った女を、そのころ住んでたアパートに連れ帰ったオレはどうかしてた。薬を盛ったクズと同類だ。

言いなりになる小夏が見たかった。今ならオレのものになる気がした。オレには敵わないと思い知らせたかった。

あの頃の小夏は手の届かないとこにいた。どうしたって歳下のガキ扱いされた。うとましさと妙な抱擁感に掻き回されて、掻き回されたまま忘れた。

切なそうに喘ぐ小夏はされるがままだった。オレの名を呼ぶ声が耳の奥にこびりついた。

『おはよ・・・、カオルちゃん』

朝、目を開けたら隣りでふにゃふにゃ笑う女がいて、思わず耳たぶに噛み付いてやった。

それから小夏はときどき、『カオルちゃん泊めて?』とキャリーケースを引っ張ってくるようになった。

理由は訊かなかった。

『あんたも懲りねーな』

居場所が欲しいなら差し出せよ。

“オレが欲しいならそう言えよ”
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