止まない雨の降る夜は
「日本語通じてねーの、あんた」

「??」

「優しくしてやった覚えがねーよ」

「そっか」

海苔が巻き付いたおにぎりを手に、ふにゃっと笑った女。

「ごめんね。勘違いした」

何をだよ。意味わかんねー女。黙って二つ目のツナサンドにかぶりつく。

「そうだ、あとで洗濯させてねー」

「勝手にしろ・・・」

「お風呂掃除もしとくね~」

使用料代わりだと言って結局、部屋中を掃除される。ノートパソコン睨んでるオレにお構いなしに。

ベランダでシーツ干してる小夏の後ろ姿を追う。違う女にうろつかれたら目障りな気がするのに、あのふにゃふにゃに帳消しにされる。気がする。

画面に目を落としてしばらく集中した。CLOAKの売り上げは大事な資金源だ、リサーチは欠かせない。

ふと。物音ひとつしない静寂に顔を上げた。

「・・・小夏?」

耳をそばだてる。気配がしない。いつの間に出かけた?・・・出てった?

頭より先に体が動いた。勢いよく寝室のドアを押し開ける。キャリーケースは隅に置きっぱなしだった。
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