私が蛙にされた悪役令嬢になるなんて、何かの冗談ですよね?

1−2 危機一髪

 カサッ……

 不意に背後で草が揺れるような音が聞こえて私は振り返り……。

「ケローッ!!」
(キャーッ!!)

 思わず絶叫してしまった。

 何と私よりもずっと大きなまだら模様の蛇が鎌首をもたげて長い舌をチロチロと出しながらこちら見つめて? いるではないか。

 そしていきなり物凄い速さで長い首を私の方へ向かって伸ばしてきた。

 逃げなければ食べられるっ!!
 そして気付いたときには身体が宙を飛んでいた。私は蛇の攻撃を難なく交わし、池を飛び越えていたのだ。

 凄いっ! 何という跳躍力!!
しかし今の私は鳥ではなく、単なる蛙だ。いつまでも空中浮遊を続けられるわけではない。ある程度の距離を飛べば、今度は当然自由落下をしていくばかり。

 ヒュ〜……

 何とも綺麗な放物線を描きながら私は地上へと落下していく。

『きゃああっ!! いやああああっ!! お、落ちる!!』

このままでは地面に叩きつけられて……ヒキガエルになってしまう!!
こんな蛙の姿のまま死んでしまうなんて……! 死んでも嫌だ!

思わずギュッと目をつぶる。

すると……。

ペチャッという音と共に、私は器用に地面に着地していた。

『ホッ……た、助かった……』

一息ついて、背後を振り返れば私は大きな池を飛び越えていた。

『すごい……蛙ってこんなに跳躍出来るんだ……』

カエルの姿をしているので、どの程度跳躍したかはしれないけれど私にとっては50m程飛んだ気分だ。

『ひょっとして、私ってただの蛙じゃないのかも……。こんなに綺麗な青い目の蛙なんて見たことがないし』

いや、もともと人間だった私が蛙になっている時点で普通の蛙では無い。けれどもこの青い瞳は尋常じゃない。まるで宝石のように輝いている。

 その時、突然背後で声が聞こえた。

「おや?こんな所にいたのかい? 随分探したよ?」

『え?!』

 驚いて振り向くと、背後にはまるで天まで届くようなマント姿の巨人が立っているではないか。

「ケロケローッ!!」
(キャーッ!!)

 思わず絶叫する私。

「おやぁ? 相当驚いているようだね?お前を魔法で蛙の姿に変えた私の姿を覚えていないのかい?」

 巨人の声が空から振ってきた。……というか、え? 魔法!? 驚いて思わず見上げるとマント姿の人物はしゃがみこんでフードを外した。

 え……? 誰……?

 フードを外した人物は20代と思しき牛乳瓶の厚底のようなメガネを掛けた男性だった。

「君を王子の命令で蛙の姿に変えた魔法使いだよ?忘れてしまったかい? サファイア」

 その名前を聞いて私が驚愕したのは……言うまでも無かった――

 
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